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子供たちへ がん患者が届ける生命(いのち)の授業

栗原和江さん59歳 埼玉県在住 会社員 NPO法人くまがやピンクリボンの会 代表理事乳がん検診未受診で、異常に気付き病院へ。経過観察途中で悪性宣告を受け手術を受け、その後治療を開始。 現在は会社員として働きながら、さまざまながんサバイバーと協力してがん啓発活動を行っている

現在の検診では「異常なし」または「要精密検査」がわかるだけで、自身の乳腺タイプについて教えてくれる医療機関が多くない。当インタビューでも語られているが、乳がん検診の受診はもちろん、今後は受診者の乳腺タイプについても告知をしてもらえるようになれば、受診に対する意識も高まり、何よりも自分でエコーの追加検査を受けるなど、自衛が可能になる。 同じ轍を踏んでほしくないと、貴重な体験を語ってくれる患者さんの言葉が一人でも多くの女性に届くことを願っている。

INDEX

  1. 活動のきっかけは自身の乳がん
  2. 子供たちへ 患者の言葉が紡ぐ生命の授業
  3. 栗原さんから家族への告知
  4. 高濃度乳房(デンスブレスト)について
  5. 自身が納得できる治療を それには患者力も必要
  6. がんと仕事について
  7. 自治体を巻き込んで更なる活動へ
  8. 栗原さんの現在
  9. 最後にこれから検診を受ける女性に対してメッセージを

栗原さんはタウン記者として働く傍ら、くまがやピンクリボンの会の代表として精力的に活動している。今やその活動は、自治体、教育現場を巻き込み、がん患者さんの経験を通して命の大切さ、家族の在り方について考える貴重な機会を与え、検診率向上にも大きく寄与している。 今日は栗原さんに現在の活動や乳がんの経験について話を聞いた。

活動のきっかけは自身の乳がん

リガーレヘルスケア(以下LH)現在、ご自身が立ち上げたNPO法人くまがやピンクリボンの会で積極的に情報発信をしていると伺っていますが、会を立ち上げた経緯などについてお教えください。

栗原乳がんに罹患した当初、私は日本で最大の組織である某患者の会に入っていました。 ですが、そこはあくまで患者としての受け身の立場、自らの地元で啓発活動、行動を起こすには、自ら「ピンクリボンの会」を立ち上げるしかありませんでした。
当時、朝日新聞タウン誌編集長として働いていましたので、まずは毎年、3000人規模のピンクリボンスマイルウオークイベントを主催している朝日新聞本社に電話し、「どうやって地元にピンクリボンの会を立ち上げたらよいか。どこかの傘下に入るべきものなのか」と、訊きました。
たまたま懇意にしていた元北埼玉支局長がCSR本部(社会貢献)に転属され、(公財)日本対がん協会に繋いでくださいました。(公財)日本対がん協会は朝日新聞社が支援をし(創立80周年記念事業を機に設立)、でしたので直接そちらで話を伺うことが出来ました。ピンクリボン運動は世界的なものですが、それぞれの団体や企業(CSRとして)が独立採算制でやっているものだから縛りや括りはないとのこと。それならと、さまざまな形態でメリットを考えたとき、とっかかりで地域SNSの活用はどうだろうかと思いました。熊谷市のSNS「あついぞホッとCOM」の設立準備段階から参加させて頂いたご縁もあり、熊谷市のコアなみなさまがそこにはいらっしゃいました。私の病気を公表しなければならない勇気と決断も必要でした。悩みました。
その時に、真剣に耳を傾けてくださり、「私たちが応援するからピンクリボンコミュニティを作りなよ」と云って下さったのが飯島総研の飯島社長、十字堂の関口社長、ゼネコン会社経営の石田社長、荒川中学校時代の同級生、友人たちでした。
そして、同じサバイバー仲間の友人・新井直美さん(現在栗原)が副代表になることを快諾してくださり、たった7人からのスタートでした。身内や家族をがんで亡くした方、さまざまな病を体験してきた方、そうでない方も、当会の趣旨に賛同くださったかたが老若男女を問わず、一人、また一人と増えて行きました。

LH活動は、男性が入ってくれたというところが大きかったのでしょうか。

栗原「男性の理解」は大きな力になっています。男性からパートナーや恋人、母親や姉妹、あるいは部下に検診への受診行動に背中を押してもらうことが重要だからです。男性が賛助会員になってくださったことで啓発活動の幅がグンと拡がりました。
また、検診率もものすごく低かったんですよ。私が乳がんになった時の地元熊谷市はたった7.5%だったので。

LH検診率が?

栗原これが今地元でやっているがん教育の資料なのですけれど、ここを見てください。これは乳がん。私が乳がんになった年(の検診率が)7.5%。(資料参照)今は検診率がずっと上がっていって、しかも5大がん検診受診率がずっと上がっています。

LH結果として乳がん検診の啓発活動に引っ張られて、他のがん検診の啓発になっていったということですね。

栗原はい、そういえると思います。 本当にありがたくて。熊谷では5年前からサバイバーが話すがん教育をやらせて頂いていますが、すごく大きな力になりました。

LHでもこれすごいですね。一NPO法人の活動が、数年でこんな風に目に見えて数字でわかる。 協力してくれる仲間たちがいたからですよね。検診率が3倍を超えている。

栗原さんたちの活動によって、乳がんに関しては平成20年に7.5%だった検診受診率が平成29年にはほぼ25%に到達。 その他のがん(胃がん、肺がん、大腸がん、子宮頸がん)も平成20年は約5~7%台だったものがそれぞれ20~30%と大きく向上したことがわかる。

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