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子供たちへ がん患者が届ける生命(いのち)の授業

栗原一人じゃ何もできない私は本当にダメダメな代表で(笑)。

私の周りがすごいしっかりしているの。だから30数年来の友人が「じゃあ会計をやるよ」って会計担当に自ら進んでなってくれたり、オムツをしている時から知っているような仲間が理事になってくれたり。だから地元の繋がりが本当に大きかったです。

LH持つべきものは友達ですね。

栗原それは本当にありがたくて。頼りにしています。

LH乳がんがわかったきっかけについて教えてください。

栗原あのね、これ私自身反省から始まっていているんです。とてもお恥ずかしい話なのですが、私は自分で、自分のしこりに気がつくまで乳がん検診を一度も受けたことがなかったんです。

LH因みにおいくつの時に気が付いたのですか?

栗原46歳の時にしこりに気がつきました。

LH今おいくつですか?

栗原今59歳です。

46歳の時、私よりも10歳年上の友人が乳がんになり右乳房を全摘したんですね。それで、その友人に、「今、乳がんが多いから検診に行きなさい!」って、毎日のようにしつこく言われて。それで初めて自己触診したら、本当にコリコリっとした小さな粒を見つけたんです…。
これは「イプ」っていうもので、乳がんの硬さと大きさを表しています。私自身のしこりを感じた時の大きさは、この5ミリぐらいでした。私の胸にできたしこりと全く同じ硬さです。
10年前、アメリカに住んでいる友人がこの「イプ」を教えてくれました。このイプを日本で作る許可を得ようと友人を介し、アメリカ対がん協会に手紙を出しました。そして、日本で唯一、許可を得ることができたのです。一昨年、弊会役員メンバーとアメリカ対がん協会のニューヨーク本部に行き、お礼を伝えてきました。 イプは、熊谷市立小中学校の保健室に置いてあります。 がん教育授業中に、児童生徒ら全員にこれを触ってもらっています。インタビューをしながら授業を進めていくんですけど、みんな声を揃えるように「硬いね」、「こんなに硬いの?」、「こんなの体にできたらどうしよう」、「お母さんに教えなくちゃ」とか、敏感に反応してくれます。
がんの基本的な知識やがん体験談を聞くだけじゃなく、イプに触った、「これが乳がんの硬さなんだ」ということが記憶に残る、良いツールになっています。

LHよく「しこり」って言いますけど、実感としてわかない。硬さがどの程度かわからないから、いつもどんな感じなのだろうと思っていました。こういうのがあるんですね。

イプ:赤円が5mmの乳がんの大きさ。下は1cmのしこりモデル。乳がんの大きさと硬さが自分で触って実感できるので異常に気付きやすい。従来の乳がん触診モデルは医療従事者向けのものが多く、一般の方が手軽に持ち運びできるものは少ない。イプはキーホルダータイプのため、いつでもどこでも触って、感触を確かめることができる。 自己触診は可能でも、乳がんのしこりの「硬さ」はわからない女性が多いため効果的な啓発ツールである。

栗原(イプを見せながら)ここになるのに10年かかるんですね。検査や検診ではこの5mmの大きさで見つけることができる。(イプの下部、2つの球を指して)でもここからここまではあっという間に大きくなっちゃうんですよ。ですから、いかにがんを早く見つけるか(早期発見、早期治療)がポイントかと言うことを話していると、子供達がすごく納得をしてくれる。

LH硬さは感覚なので、想像できにくいですね。体験者でないと、多分わからないかもしれません。

栗原はい。自己触診していても病院に行く目安がわからない、乳がんの硬さが分からないから。イプのようなツールが身近にあれば、(触った感じが)似ていれば自己判断ができると思うんです。本当に、このぐらいだったの。

LHよく分かりましたね。

栗原がんが皮膚に近かったんです。

LHそうだったのですね。

栗原すぐに熊谷市内の乳腺外科医のもとに行ったのですが、「ただの乳腺症だよ」って言われたの。それで、安心しちゃって。

LHでも検査は受けていらっしゃいますよね?

栗原はい、やりました。視触診とマンモグラフィーでした。それでもわからなかった。

LHエコーはやらなかった?

栗原エコーはやりませんでした…。 それでしばらくたって自己触診をやって、やっぱり気になったので違う病院に行ったら「まあ、しこりはあるけど良性だよ」って言われて。(その時は)エコーもやりました。ただ、血流がなかったんです。

LHなるほど…。

栗原血液検査結果(腫瘍マーカー)もマイナスでした。ですが、グレーゾーンということもあり、定期的に検査しましょう、ということになって。
自分でしこりに気づいてから9ヶ月目、突然「悪性です」って言われました…。 その診断が信じられずに、すぐにカルテ開示を求めました。さらに、A病院にセカンド、まあほとんどサードオピニオンですよね。担当医に診療情報を見てもらったら「悪性です」ってその日のうちに言われて。

LH1件目の病院では乳腺症、2件目の病院に行って、その時には血流がないから良性のしこりですね、と。それで悪性です、って言われたのがその2件目の病院?

栗原はい、そうです。

LH急にそんなことがあるのですか?

栗原わかりません。カルテには、「フォローアップが必要」だと書いてあり、血流はマイナス、と記載されていました。けれども、どんどんしこりが大きくなっていくんですよ。

LH自分でも分かる感じ?

栗原エコーで、画像上で(わかる感じ)。

LHじゃあショートフォローだった?

栗原3ヶ月に一度でした。 当時私は乳がんの知識が全くなかったものですから…。今だったら分かるんですけどね。
はじめから針生検を、組織検査をしていれば、もしかしたら「悪性」だと判ったかもしれません。そうすれば 辛く長い治療も、費用も抑えられたと思います。

LH患者さんの立場としたら辛いですね。

栗原本当に。この体験を経て、尚更啓発をやりたいって思って始めました。
今ではその乳がんセミナーを地元とかでやらせていただく時には、当時の自分のエコーの画像を出しています。

LHなるほど。

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