All we need is your voice

子供たちへ がん患者が届ける生命(いのち)の授業

栗原さんから家族への告知

栗原私自身、夫になかなか言えなくて、始めに息子たちに話しましたから。

LH息子さんの方が先だった?

栗原先でした。

LH当時息子さんはおいくつくらいだったのですか?

栗原ふたりとも大学生だったから 全く大丈夫だったんですけれど。

LH息子さんのリアクションってどうだったんですか?

栗原二人とも冷静でした。
息子たちは中学生くらいから私のことを「奥さん」と呼ぶんですけど(笑)。「奥さん大丈夫だよ。僕たちがついているから。パパに一緒に話そう」と言ってくれました。

LHご主人への告知が心配だったのですね。

栗原(うなずいて)すごく心配で。まず会社の上司に話したのが一番初め、2番目に息子たち、3番目に夫。同居している年老いた両親には半年以上話せませんでした。

LH心配させちゃいますもんね。
気持ちがガクッと下がっちゃう時はありましたか?

栗原ありました。(がんは)初期だったんですよ。それでも、です。
初期とはいえ見落とされたときはやっぱり死を考えましたね。まだ私の頭の中では「がん=死」っていうイメージが強かったので。
今では全く思ってないですよ。全く思ってないですけど、当時はそんなイメージを持っていましたから。

LHましてや何もご存じない状態だった。

栗原そう、だから親より先に逝っちゃったらどうしようとか、順番は間違えちゃいけないなとは思いました。

LHしこりに気付いて一軒目の病院でわからず、2軒目の病院で経過観察になった。しこりに気付いて経過観察を経て9ヶ月目に悪性です、と言われたとのことですが、この間は不安だけれども先生もなんでもないと言っているし、何の疑いもなかった?

栗原もちろん!まさか自分ががんだとは全く思ってなかったです。悪性だって言われるなんて夢にも思ってなかったです。

LHじゃあ、(がんだと)言われた瞬間とんでもないことですよね?

栗原先生が私の目を見なかったですもん。 こう、パソコンの前にいらして、私がこうやってみて二回「先生、今何とおっしゃいましたか?」 もう、こう覗き込むように。先生は私と目を合わせず「悪性です」と。
「先生、納得いかない」 ってその場で言いました。

LHそれで、診療情報提供書を持って次の病院に行ったんですね。

栗原長男が大学院で医療工学を学んでいたんですね。カルテを見ることもできましたし。「でも、奥さんここが疑問だ」って言って、カルテ開示をしていただいた後は長男が先生に質問攻めです。

LH質問攻めというのはセカンドオピニオン先の担当医に?

栗原いいえ。

LH乳がんを宣告された先生に?

栗原はい。その後、独りでセカンドオピニオンとして現在の主治医に会い、約1時間半、色々なお話をさせて頂いきました。はじめに録音許可を頂き、内容はすべて録音しました。その録音テープを家に持ち帰り、家族に聞かせ、「私はここの病院で全て治療したい」と話し、家族も賛成してくれました。
右乳房温存での内視鏡下手術でした。乳輪の周りを2cm、脇の下を1.5cm切って、ガンを取り出す。その前の病院では、(乳房を指して)ここからここまで一直線に10cm切ってがんを取り出すって言われていました。術法も違いますし、回復も早かったです。

LHやっぱりセカンドオピニオンって大事ですか?

栗原大事ですね。すごく大事です。特に要精密検査になったり、不安や疑問があったりする場合は、他のドクターの意見も聞いてみるというのは参考になると思います。

高濃度乳房(デンスブレスト)について

栗原がん教育の際、保護者参観がある場合、児童生徒らが教室に戻ってから、保護者のみなさんを対象に「プチ乳がんセミナー」をやっています。その時に必ずお伝えしているのが「日本乳がん検診精度管理中央機構」のホームページを紹介すること。
Aランクドクターの話と、それから高濃度乳房の話、自己触診のやり方も必ずお伝えしています。その時に、大抵どこの病院がいいですかと訊かれるんです

LHそうでしょうね。

栗原「(病院は)どこに行ったらいいですか」という質問には、精中構(日本乳がん検診精度管理中央機構)の認定一覧表を参考におすすめをしています。

LH高濃度乳房のお話は皆さんどんな反応をされますか?

栗原ほとんど知らなかったって言っています。私が弊社(埼玉新聞社)の力を借りて、高濃度乳房の特集を行い、埼玉県内全部の市区町村対策型検診において高濃度乳房を告知しているか、していないかのアンケートをとったんです。

LHどうでした?

栗原告知をしている自治体は少ないです。非常に少ないです。把握している範囲では、熊谷市や行田市など埼玉県内5つの市だけが高濃度乳房の告知をしています。

LH告知してくれるだけでもいいですよね。

栗原はい、その通りです。以前、「乳がん・子宮頸がん検診促進議員連盟勉強会」において、聖マリアンナ医科大学附属研究所ブレスト&イメージング先端医療センター附属クリニックで、院長をなさっている福田 護(ふくだ まもる)先生が地元川崎市で「高濃度乳房告知」をしている例を挙げ、その成果を報告くださいました。
すぐに、熊谷市保健センターに出向き、保健センター長に直談判でお話をさせて頂き、熊谷市も告知をしてくださるようになりました。

LH埼玉はまだエコー追加っていう所まで実現しているところは少ないのでしょうか。なかなかないのですか?

栗原少ないです。ただ行田市では30代からエコー検査をやっています。
やはり、行政担当者の熱意ですね。担当者の温度差によって全く対応が違います。せっかくいい担当者が来たのに行政の場合、2年後3年後には変わってしまう。

LH異動ですね。

栗原そこが本当に歯がゆくて、歯がゆくて。

LH2、3年だと腰を落ち着けて取り組むことって難しいですね。

栗原本当に難しいです。

LHまた次の方が来て制度が変わっちゃう場合もありますものね。
ただ、市民活動や行政の働きというのは大きいし、栗原さん達の活動は非常に意味のあることだと思います。

自身が納得できる治療を それには患者力も必要

医療に関する情報はその多くが非対称。一般の方が医師に対して質問を適切にできるかというと、なかなか難しいところである。
まして初発の患者はまだ知識にも乏しい上、比較ができるほどの情報収集や準備ができていない場合が多いのではないだろうか。
医師に面倒な患者だと思われたくない、嫌われたくないとの思いから、聞きたいこと、わからないことを切り出せないまま治療に進むことも多いと思われる。
その点、栗原さんは担当医とみっちり話をし、納得の上治療に進んだことが良くわかる。

栗原セカンドオピニオンで主治医となった先生に、「私と同じ乳がんのステージと顔つきで内視鏡下温存手術の場合、再発率はどれくらいですか」って確認したんです。そしたら以前他で聞いた数値よりも、はるかにA病院での再発率が低かったので、治療を受ける決め手となりました。
非常に丁寧な説明をしてくださいましたし、術後も違いましたし、ライフステージっていうのかな…こちらの意思を尊重し、仕事への配慮、入院する日程、放射線治療の日程など先々まで考えてくださる。

LHありがたいですね。

栗原はい、安心することができました。

LHおっしゃる通りで治療のやり方、治療にかけられる金額、期間ってライフステージで違ってきますね。
小さい子供がいる、フルタイムで働いている、リタイアしているなどそれぞれの環境で全然違うと思うんです。でも、その優先順位に合わせて、むしろ先回りして考えてくださっていたような感じですね。

栗原そうなんです、配慮して治療計画を立ててくれたので、とても助かりました。 ただ、患者自身も一般的に言われていることですけれども、「患者力」をつけることが大事。自分で選択する力、コミュニケーション力をつけることがすごく大事だと思います。
弊会では定期的に「サバイバー茶話会」を開いているんですね。東京のクリニックや地元でも月に4箇所で開催をし、ピアサポーターが傾聴したり、アドバイスしたりしています。そんな中で、常に患者さんたちの一番の悩みが医療者とのコミュニケーションなんです。
「医療者(先生や理学療法士さんなど)と相性が合わない」、「看護師さんの言葉で嫌な気持ちになった」、「次病院に行く時に嫌な気持ちになったらどうしよう」、「リハビリで落ち込んでいる」とかね。がん患者だけの集まりですから、泣いても笑っても、なんでもぶっちゃけてスッキリして帰って頂く。
診察時には訊きたいこと3つだけをメモ書きして行きましょうって、長くダラダラ聞くのではなくてね、ポイント絞ってみてとアドバイスしています。ピアサポーターなる役員は、乳がんに関する基礎的な知識を持つために、学会にも行ってもらったり、ピンクリボンアドバイザー資格を取るなど努力を重ねています。今の患者さんは賢くて、勉強している人はたくさんいらっしゃいますから尚更です。

LHそうですね。ただネットは玉石混交でいろんな情報が溢れています。

栗原そうなんですよね、だから受け入れる私たちピアサポーターの先輩が、きちんと正しい知識を提供する。まして子供たちに話す時には。

1 2 3 4 5