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明るく楽しい乳がん患者のすすめ

がんとメンタル そしてキャンサーギフト

LH前向きな考えで元気になれる。昔から思考的にそんな感じですか?

風間そうです、超ポジティブ思考です!

LH私なら何故自分がこんな病気になんて考えてしまいます。受容するまでに時間が必要な人もいますね。

風間そう。結構言われるのは「そうは言っても…」

LH??

風間「そうは言っても本当はさ(辛いんでしょ)」ってよく言われます。ただ、私の場合、妹のほうが深刻だったので、比較ができたのも良かったのかな。妹は地方都市に住んでいたのですが、患者会もない、情報もなかった。

LH地域によって患者会の有無もそうですが、情報も含めそもそも専門医がいない、専門病院がないところもありますね。乳腺クリニックが近くにないところもあるようですね。

風間私の妹の住んでいたところは乳腺外科のあるところは、大学病院とがんセンターの2か所しかなかった。

LH地方によっては乳腺クリニックが少なくて、しかも混んでいる。

風間だからいろんな病気の方がいらして、いろんな考え方があると思うんですが。まあ何よりも早期発見、検診に行こう。それは何のためということを周知するのが大事なのだと思う。がんになったから不幸なわけじゃない。いやなこと辛いことばかりじゃない。だって、知り合うはずのなかった人と知り合えちゃう。できるはずのない体験ができたり。キャンサーギフトって言ってしまうのもあれなんですけど、そういうのもあるし。

LHキャンサーギフトって言葉があるのですね。できなかったことができるようになる、ということは具体的にどういうことですか?

風間私、ベートーベンの第九を歌っているんですけれども。昔から薄ぼんやりと、死ぬまでに一回歌ってみたいと思っていたんですよ。でも積極的に合唱団を探したいとか、行こうとか全然なかったんですが、たまたまがん研有明病院で、がん患者さんが歌う春の第九を企画していた。
主治医の外来日を調べようと思って、たまたまホームページを開けたら第九の募集が出ていて「私、やりたい」と思って。それに参加したのが2年前。それでハマって今シーズンは第九の合唱団三つ掛け持ちしています。

LH歌いすぎ!

風間はまりにはまってしまいました(笑)。

LH何が気持ちいいのですか?

風間大きな声を出すことが。だってあんな普段大きい声出せないですよ?それにオーケストラで歌うって贅沢ですよ。

LH何かきっかけがないとやれないですよね。普通に生活しているとまあいいや、来年でいいやみたいに思ってしまいます。

風間じゃあ歌いたいなと思っても、どうやったら歌えるかっていうことも探しもせず一万人の第九っていうのは知っていましたけど、どうやったら出られるのかなぐらいな感じでした。

LH病気がきっかけで、漠然とやりたいと思っていたことへ背中を押されるのでしょうね。

風間第九とあとは、泳ぐことと走ることをがんになってから始めました。子供の頃から泳げたんですが、神奈川県の葉山で「HAYAMAN」っていうイベントがありまして。泳ぐ・パドル・砂浜を走る、を1人または3人チームで行うミニトライアスロンなのですが、たまたま誘われてがん友と何人かでチーム参加しました。その後、フルマラソンを走る友達とも知り合って、「走るのは楽しいよ」って言われていたのですが、「いや、走らない、走るの大嫌い」と断っていたら、じゃあスロージョギングならできるのでは、と誘っていただいて走り始めました。

LH交友関係が広がっていますね。

風間上手に誘ってくださるので。「やろうよ、やろうよ!」って。それと乳がんは太ると再発リスクが高くなるので、運動しようということもあって走っています。母なんかは走るのが大嫌いだった私がジョギングしているのを知ってびっくりしています。

LH私たちより健康的。

風間私ががんになってから考え方が変わった部分なんですけれども、人は自分が思う長さを生きられないんですよ。また生きている間中ずっと元気でなんでもできる状態にいるとは限らない。そうと思ったらやりたいことは全部やらなきゃ、後でやっておけばよかったって後悔はしたくない。
1日24時間。私は8時間寝たい、でも8時間は仕事をしないといけない。で残りの8時間にどうやって楽しいことをやろうかってずっと考えています。楽しい8時間を死守するために、睡眠時間も仕事の時間もこれ以上増やさないようにしています(笑)。人は生きるに限りがあるんです。できること、やりたいことをどんどんやらなきゃもったいない!

LH有限だとは漠然と思っていますが、何もしていない…(苦笑)。

風間がん友が増えれば増えるほど、年に何人かは旅立つんですよ。若い方も年配の方も。

LH確かにそうですね。それも現実ですね。

風間私がそうなった時に「あー、やっておけばよかった!」そんなふうに思いたくない。やってみて「あー違った!」と思ったらやめたらいい。

LHとりあえずやってみようですね。今は体調的にはバッチリですか?

風間そうですね。絶好調です!

同じ女性としてここまで読んでくださった皆様へ

LH乳がんを経験して同じ女性にむけて。これから乳がん検診を受ける人、受けている人、あるいは同じような乳がんの経験をした人がホームページを見に来ると思います。その方たちに向けてメッセージやアドバイスをお願いします。

風間まず慌てるな。よく芸能人が乳がんになったって報道があると若い子が精密検査に押し寄せる。でも、20代で乳がんになるって言うのはすごくまれ。過剰に検査をやらなくていい。先月受けて今月も受けるなんていう人もいるらしいんですよ。そんなに慌てない。乳がんは1センチの大きさになるまで10年かかりその後1年で2センチの大きさになるといわれています。また罹患年齢も40代から50代がピークです。だから、乳がん検診は40歳以降2年に1度受けましょうって言われているんです。自分が今いくつで、どれだけのリスクがあって、どういう状態か。自己触診をしていつもと違う感覚はないかを確認する。40歳以上の人は乳がん検診をいつ受けたか、1年2年で受けたかを思い出す。慌てず落ち着いて考えましょう。でもこれらを考えて、慌てないといけない人は慌ててね。

LH過剰に怖がるのではなく、きちんと検診を受けて何かおかしいと思ったらすぐに受診をするということですね。

風間それ相応の対象年齢になったら乳がん検診を受けて、自分がどんなおっぱいを持っているのかちゃんと自分で知っているっていうのが大事。自分の体なので。

LH今、検診で教えてくれるところもあるし、結果に書いてあるところもありますものね。でもわからない場合は聞いたほうが良いですね。乳がん経験者に対してはいかがですか?例えば乳がんの方でも風間さんのように元気になったという人とそうじゃない人がいらっしゃいます。落ち込んでいてなかなか前向きになれない方もいらっしゃる方もしれません。

風間(落ち込んで)しょんぼりしている人はしょんぼりしていてもいいと思うんですよ。泣きたい時には泣かないと、がんになったという状況を多分乗り越えられないと思います。
自分の気持ちにあらがわないって大切だと思うんです。しょんぼりしたいのに無理に元気を装ってみたりとか、元気なのに辛そうなふりをするとか。がんになったということはやはり大変なことですし、受け止めるのに時間がかかって当然だと思います。逆に言えば、がんになったという状況から逃げ出すことはできないのですから、時間がかかってもいつかは「どう生きていくか」ということを考えるようになってほしいです。ずっと泣いていたり、しょんぼりしたまま生きていくのはやっぱりもったいないと思います。
「楽しく生きていく」の、楽しさって人それぞれだと思うし、それぞれの尺度で楽しく生きていくってことを考えられるようになればいいのではないでしょうか。そうしていくうちにいろんな景色が見えるようになってきて、視野が広くなり、世界が広がり、がんになっても嫌なこと辛いことばかりじゃないって思えるようになるんじゃないかなって思っています。正直、私だってがんになんか、なりたくなかったです。でもなっちゃったものはしょうがない。しょうがないなら、せっかくがんになったのだから、がんにならなきゃできなかったことをも楽しもう。
それが私なりの生き方だなって思っています。

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