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明るく楽しい乳がん患者のすすめ

そして治療へ 私たちの日常に溢れるがんのネガティブ情報

風間見つかるのが怖いっていう人がいますよね。

LHそうですね。「これおかしいな」って思っていても放置しちゃうっていう、先ほど話が出ましたが。そうなると後が大変なことになりますよね。
そこらへんをどういう風にわかってもらうといいのかなって。多分、風間さんの妹さんもそうなのでしょうが、おかしいなとは思っていた。忙しいことももちろんあるし、検査に行くのもなんとなく億劫だということもあるのでしょうが、でも、本当は心のどこかで知りたくない。事実に直面するのが怖い、そんな感情があって受診のタイミングを逃してしまう人がいるような気もします。

風間私みたいにサラリーマンで、企業には健康診断の受診の義務があるので毎年受診することはハードルが高くないと思うんです。一方で2年に1回の人達やクーポンになっている人達、主婦の方などなかなか難しいのかなと。非正規で働いている方、パートの方も難しいのかもしれないですね。

メディアは(がん患者が)死んじゃう方が、ニュースになるから。でも、そうじゃない乳がん患者の方が圧倒的に多いじゃないですか(怒)。

LHメディアのがんに対する取り上げ方としては、「がん=死」のように怖い病気だから検診を受けたほうがいいというよりも、「早く見つけた方いい」、「今、がんは死んでしまう病気じゃない」という方向で早期発見を促すほうが良いということですよね。今のがん報道は怖がらせて、結果、検診の啓発のようになっていますが、早期発見の患者利益をもっと報道すべき、と。
アプローチとしては逆なのかもしれませんね。早く見つかれば、早く治療ができて、早く社会復帰ができる。今までと変わらない生活が送れるようになる、そちらのメリットの方を前面に出して、アピールすればもっと検診受診率も上がって、おかしいと思ったらすぐ受診ができるんじゃないでしょうか。
今はがんになっても怖くないっていうことが、もっと伝わらないといけないのかもしれないですね。

風間また、それ以前にがんになったら必ず抗がん剤をやって髪が抜けてっていう…。

LHネガティブな情報のほうが多いですよね。

風間でも、乳がんのステージ1いわゆる初期の段階で発見できて、乳がんのタイプによっては抗がん剤をやらずにホルモン治療だけでいいケースもある。実は、私はこのケースに当てはまるタイプでした。

でも結果的に私は抗がん剤をすることにしました。というのも、最初の検査ではホルモン治療が効かないタイプの乳がんで抗がん剤治療が必要だと結果が出ていたのですが、術後の病理検査でホルモン治療が有効とされるタイプと結果が出たんです。

LHそんなことがあるのですか?最初の病理が?

風間「まだら」だったとか?

LH乳腺密度が均一だったのですね。それだったら受けておきたいですよね。

風間それで、どうするっていう話になって、何回も何回もカンファレンスにかけていただいて1ヶ月半ぐらいかかったのかな。最後は「やらなくていいっていうエビデンスが見つからない」ということで抗がん剤治療をやることにしました。一般的には1.5センチでリンパ節転移もなく、ホルモン治療が効くタイプの乳がんだったら抗がん剤はやらない髪も抜けないです。

LHすごくネガティブな情報しか流れていない。私たちが普段目にする情報は、ステージ何で、何歳で死んじゃった、みたいな話や抗がん剤の副作用の話など、そういうことばかり。記事にしやすいからなんでしょうけど。それって実はその情報に触れる女性が多ければ多いほど女性全体にとってはよくないことですよね。触れている情報のほとんどがそんなネガティブな話ばかりですよね。

風間そうなんです。でも、「それだけじゃない!」と。

ここで風間さんはお母様のお話をされた。お母様が罹患された、当時の治療は胸とリンパ節の全摘手術が主流。このため胸に大きな傷ができてしまった。手術後、片胸の傷跡を隠さず温泉に入ったところ、入浴中の他の女性が避けるようにいなくなってしまったとのこと。そこでお母様はその方たちのところへ行って事情を説明し、乳がんは自分で見つけることができると話したそうだ。

風間そういうのに(ネガティブ情報以外に)触れてない人が、さっき言っていたようなメディアのネガティブ情報ばかりを聞いて…。

LH今の話を聞いて、なぜ検診や精密検査に行くことが嫌なのか。しこりや異常に気が付いていても病院に行かないのはなぜなのか、というと「がん=死のイメージ」がついてしまっている。
そうじゃない人がいることは知らないはずはないんだけれども、圧倒的情報量として亡くなった方や抗がん剤の辛さが取り上げられて、かなり洗脳されているというふうに思いました。

風間そう思います。

LHでも、そうじゃない人の方が多いわけで。確かに検診で引っかかっても何ともない人もいるし、そもそも検診ですら半分も受けていない状態。検診時の肉体的な痛みがあることもそうでしょうが、検診で引っかかった時の心構えみたいなのができていないのかな。

風間早ければきちんと治る、私みたいに元気になれた人の声が少なくって。そんなのはあまり取り上げられないんです。

LHがんであっても普通の生活に戻っている人が多い。圧倒的にこれらの人が多いにも関わらず、亡くなった方の話のほうがメディアで取り上げられるためそういった情報にさらされる。すると、そうなった時に自分で受け止められる自信がない、だから怖くて行けない。

だから要精査になった際、まだ、乳がんと診断されていないにも関わらずに「どうしよう、どうしよう」みたいにパニックになってしまうかたも少なくない。

がんの告知で頭が真っ白になって、先生の話が全く頭に入らなかったっていうような話はよく聞きます。

風間がんって言われた時点で「私死ぬのね…」みたいな。

LHそのイメージが払拭された方ががん検診の受診率が上がるのかもしれませんね。先ほどのメディアの洗脳ではないですが、明るい話が同じ数だけ出ていれば、もっと違うのかもしれませんね。もちろん不幸にして亡くなられる方もいらっしゃいますが、普通の生活に戻っている方はもっとたくさんいるはずなので。報道自体が偏っている。

風間うちの妹はステージ4で見つかりましたけれども、4年10か月生きていました。「5年生存祝いをやろうね」と言っていたのですが、仕事しながら治療を続けていました。

LH仕事を続けていたのですか?

風間主治医も「ゆっくり治療をやっていれば新しい薬も出ますよ。焦らず諦めずやっていきましょう。」って、いう先生で。常に次の手を考えてくれていて、新しい薬も積極的に取り入れてくれていました。がんだからって一括りではなく、特に乳がんはこんなにいろんな研究が進んでいる、っていうことを知らないですよね、みんなね。

だから「早期発見は大事です」、「検診に行きましょう」というけれど、何故、早期発見が大事なのかというところがまだ知られてないという気がします。

LH早期発見のメリットがきちんと伝わっていない。風間さんのように、今こんなに元気なんですっていう人の話や情報が、もっと発信されると多分女性の意識も変わってくる。ちょっと後回しにするのをやめてちゃんと検診に行かなきゃ、とならないといけない。だけどそこが十分伝わっていないところですね。

風間早期発見を何故しないといけないか、なぜ大事なのか。そこが分かっていない。

LH知らないなら知らないでそのまま行きたい。それじゃ駄目ってことですね。見て見ぬふりをしちゃいけない。

どこかが痛いとか血が出ているなら、病院に行くけれど

風間乳がんって、ただ「なんか変なあるものがある」と思っても、痛いわけでも血が出ているわけでもない。

LHそうですよね。

風間内臓と違って痛いとか血が出るとか。呑み込めずご飯が食べられないとか、それがないのが乳がんなんです。それこそ歯が痛くなったら歯医者に行くじゃないですか。じゃあ、痛くなったら考えようかな、みたいな。

LHでも乳がんは痛くならないことのほうが多いですものね。歯医者に行くみたいに、おかしいと思った時点で、すぐに受診をするべきということですね。

風間自分だけで抱え込んでいる人も多い気がします。「私、実は胸にしこりがあって」ってことを人に言えない。

LH胸のしこりは人に言えない、怖いからですかね?生理不順なんかは比較的話しやすいけど。

風間もちろんがんになっている人の中には知られたくないと思う人もいます。

LHそれはありますね。がんかもしれないと思うと言えなくなっちゃうかもしれないですね。

風間また言ったところで、正しい情報をくれるかどうかも分からないですもんね。この間お目にかかった方は7センチまで大きくなっていたそうです。

LH7センチって片胸の半分くらいの大きさですよね!?

風間さすがにそこまでになって胸がガシガシの状態で、お友達に言ったら「それは病院に行かないと!」と言われたって。

LHそれはすごいですね。胸がガシガシって…(啞然)。

乳がんだった!いつ、どこで、誰に話をする?

LH風間さんは乳がん体験者コーディネーター(BEC)の資格を持っていますよね。そういう話はコーディネーターの活動を通じて聞かれるのですか?

風間イベントや患者同志の集まり。あとは2年前に国立がん研究センターの患者・市民パネルに参加して、そこでいろんながん種の方と知り合って。

LHBECの制度はどのようにして知ったのですか?

風間乳がんが分かってすぐくらいです。たまたま行った患者の集まりで、資格を取っている人たちがいて何か楽しそうだったんですよね。

LHプログラムを拝見しましたが、かなりしっかりした内容のようですね。具体的にはどのような感じなのですか?

風間乳がんの原因、治療がんと就労、あと抗がん剤治療・放射線治療についてなど、十数コースあるのかな。ネットで受講してレポートを出すんです。最後はピアサポートの相談のロールプレイングをやります。私自身は現在は残念ながらピアサポート活動はしていないのですが。

LH患者会の役割やピアサポートはどういった感じで行われるのでしょうか?乳がんになった方を乳がんの先輩が話を聞くみたいな感じなのですか?

風間そうですね…。患者さんはやっぱり話したい。

LH同じ経験をしている人に自分の辛かったことを話したい。聞いてもらいたいということですね。

風間そう、話したいし、同じ悩みや経験のある方の意見を聞きたい。

LH話し相手としては同じ経験者なのでやはり気が楽でしょうね。全然なんでもない相手より話がしやすいですよね。

風間私はそれこそ確定診断が出てすぐ。その時女性の部下ばっかりだったので、メンバー全員に「あなた達ちゃんと検診を受けなさいよ!」って。その場で「私がんだったから休むから」といって上司も呼んで話をしました。ほとんどの人が頑張って治療して、早く元気になって戻ってきてくださいって感じだったんですけど、中には乳がんだったことを話したら「言われたこっちが困る」と言われてしまって。「どうしたらいいの?」と。
「いや何もしなくていいよ」って(笑)。あとは「うちのかみさんも実は…。」っていう男性がいっぱいいました。

LHやはりみんな黙っているのですね。

風間言えないんだって。そりゃそうですよね。うちのかみさん乳がんなんて言ってまわる話じゃないですし。

LH言われても困っちゃうという人も多い…。

風間身近にがん患者がいない人や逆にがんで苦しい状況にある人を知っている人は、がんだと聞いた瞬間に「え!?」って違う生き物になっちゃったみたいな感覚になるみたいです。患者側は何も変わらないと思っていても、相手側からの見え方が変わっちゃう。もしくは相手側は変えなくちゃいけないんじゃないかと思っている。

LHなるほど。

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